首相・大統領・国家主席・天皇や総理大臣の権限の違いって何?
テレビのニュースを見ていると、よく耳にする
日本の「首相」「総理大臣」「天皇」。アメリカの「大統領」、中国の習近平「国家主席」。
とりあえず全部めっちゃ偉い人っていうのはわかりますが(笑)
その権限や意味の違いって何?
と聞かれると、答えにつまってしまう…そんなことってありませんか?
私は何を隠そう、今まで全く違いについて知りませんでした( ;∀;)!
調べてみると、アメリカには「大統領」はいるけど「首相」はいない、
中国には「国家主席」がいるのに、それとは別に「首相」もいます。
…なんかもぅごちゃごちゃしすぎ!結局どっちが偉い人?!とかもめっちゃ気になってしまいました。
今回は私の覚え書きもかねて
「首相・大統領・国家主席・天皇や総理大臣の権限の違いって何?」
と題し、バッチリ調べてみたのでぜひお役立てればと思います!!(‘ω’)ノ
まずは「国家元首」と「君主(王)」の違いから!
首相と大統領の違いを理解する前に、まずはおさえておきたい言葉があります。
それが
- 「国家元首(こっかげんしゅ)」
- 「君主(くんしゅ)」
の二つ。ちょっと聞きなれませんがどういう意味なんでしょうか。
「国家元首」 Head of stateとは
「国家元首」とは、国を代表する国家機関・人物の総称。国家をひとつの「まとまり」としたときに、頭・代表となる人物のこと。
単に「元首」とも言われます。
国の形態 | 国家元首になりうる人 |
王族・皇族などがいる国 | 王様や皇帝 |
共和制国家 | 大統領(議会の多数決で決定) |
共産国 | 一番偉い地位の主席や議長、総書記など、 |
軍事国家 | 軍人のトップ |
「君主」monarchとは
「君主」とは「国家元首」のうち、世襲制により世代交代していく人物のこと。
君主がいる国は、その人物がそのまま国家元首ということになる。
君主はいわゆる「王様」のことで、王様が主権をもつ政治制度を君主制と言います。
君主制と共和制の違い
君主制(monarchy)とは、君主が存在する政治形態のことで、君主制を支持する思想を君主主義(monarchism)といいます。
それに対して、対義語は共和制(republic)で、君主制をとらない政治形態のこと。
つまり
君主主義(monarchism) ↔ 共和主義(republicanism)
となります。
国を代表する国家機関・人物の総称=国家元首(元首) | ||
君主制の有無 | 無し | 有り |
国のトップ | 大統領 | 君主(王) |
行政のトップ | 大統領 | 首相 |
国家 | 共和国 | 君主国 |
政治形態 | 共和制 | 君主制 |
思想 | 共和主義 | 君主主義 |
「国家元首」という絶対的な存在や概念があり、そのうち君主制がその国にあるかどうかで呼び方が違います。
・君主制のある国の国家元首→君主(王)
・君主制のない国の国家元首→大統領
ということ。
「君主(王)」は、一般的には「世襲制の国家元首のこと」と説明されます。
日本の場合は、天皇陛下が「君主」
日本の場合、対外的には「天皇」が「君主」と見られています。
内閣の説明によれば「国家を代表する」という意味で天皇を元首と呼んでも「さしつかえがない」と述べる程度にとどめている
ウィキペディア 日本の元首について
大統領の役割や権限
「君主制」「共和制」「国家元首」の意味や定義を最初にお話ししました。
それを踏まえて、ますは大統領の役割や権限について。
大統領とは、君主制が無い共和制国家の「国家元首」という位置づけで、
基本的に、三権(行政・立法・司法)を持ち、権限・対外的にもその国のトップの人になります。
ただドイツなどは大統領の権限は「中立的権力(pouvoir neutre)」にとどめられ、
国家元首ではありますが、実権を持たない例外国もいくつかあります。
【大統領の基本的な意味】
共和制国家の「国家元首」のことで、国家を代表する機関・人物
【大統領の選び方】
首相と違って、基本的に大統領は、国民投票によって選ばれる
(ただし、ドイツは連邦議会によって選出など例外あり)
首相の役割や権限
首相とは「その国の行政のトップの役割をする人物」という意味の通称名であり、定義・権限は国によって異なります。
当然こちらも、国によって役割や権限の範囲は大きく異なります。
日本やイギリス、ドイツなど議院内閣制の国では、議会の与党(=多数政党)の党首が、首相に任命されます。
【首相の基本的な意味】
議会や行政権の代表者
【首相の選び方】
大統領と違って、国民が直接投票で選ぶわけではなく、議員が投票した人物が選出される
(ただし国によっては大統領、国家元首からも指名される場合もあり)
首相=行政の長の通称名で、役割は国によってさまざま!
たとえば日本の安部首相。
ご存知の通り「安部総理」とか「安部内閣総理大臣」とも言われますね。
「総理」とは、「内閣総理大臣」の略称で、国の行政を担当する内閣のトップのこと。
日本の首相のように、実質的に権力が集中している場合は
「首相」=「総理」
となるわけですね!
このように、日本において「首相」は「内閣総理大臣」となりますが、
「内閣総理大臣」という呼び名は日本だけであって、海外においてはこの限りではありません。
イタリアの場合
イタリアのジュゼッペ・コンテ首相は、イタリアの行政府の長で、正式名称は
「閣僚評議会議長(かくりょうひょうぎかいぎちょう)」
と言います。
イタリアでは内閣総理大臣ではなく「閣僚評議会議長」が行政の長であり、その通称として「首相」が使われます。
韓国の場合
韓国は「大統領」というイメージがありますが、実は「首相」というポジションもあります。
ただ韓国の「首相」とは
「国務総理(こくむそうり)」
というのが正式な名称になるようです。
ちなみに「国務総理」と「首相」の明確な使い分けのルールはないようです。
まとめると…
「首相」=各国の行政の長の通称名であり、正式には
- 日本の首相=内閣総理大臣
- 韓国の首相=国務総理
- 中国の首相=国務院総理
- イタリアの首相=閣僚評議会議長
- ロシアの首相=連邦政府議長・政府主席
などがあります。
そのほか「首相」のいる国として有名なのは
- ドイツ
- イギリス
- カナダ
- スペイン
- 中国
- ロシア
- オーストラリア
- ニュージーランド
などなど。
大統領と首相の違い
大統領と首相について簡単に説明しましたが、両者の役割・権限というのは各国の政治制度によって違うため、
(そもそも大統領という役割が無い国もある)
違いは一言では言いにくいのですが、あえて言うなら、
【大統領】
国家元首として国を代表する人物
【首相】
国家元首の役割や権限が実質無いため、代わりに行政府のトップとして権力を持っている人物
といったところでしょうか。
フランスやドイツのように「大統領」も「首相」どちらもいる国の例をあげると、
もともと「君主」がいた君主制の国では、君主を廃する代わりに、大統領が国家元首になり、君主を補佐していた機関が、そのまま内閣府・首相となったようなイメージです。
これを現在の世界情勢に合わせてみると、権限や存在感のイメージとしては
天皇(emperor)≒ ローマ法王(Pope)>各国の王様(king)>各国の大統領(president)>各国の首相(premier)
の順番です。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
日本の天皇陛下は、世界的に見ても、ハンパなく格式の高い方なんです!
(天皇陛下については最後にお話ししますね!)
日本・カナダ・アメリカの体制比較
2018年9月現在の日本・カナダ・アメリカの国家元首や政治制度をみてみます。
日本の例
【国家元首(君主)】:天皇(現:今上天皇 第125代天皇)
【首相】内閣総理大臣(現:安倍晋三 第96・97代内閣総理大臣)
【政治制度】立憲君主制、議院内閣制
【立憲君主制】
憲法に従って政治が行われる君主制の政治
【議院内閣制】
議会(立法府:国会)と政府(行政府:内閣)とを分立させつつ、政府の存立を議会(特に下院:衆議院)の信任に依存させる統治システム
カナダの例
【国家元首(君主)】イギリス連邦王国女王(現:エリザベス2世)
【首相】連邦政府首長(現:ジャスティン・トルドー第29代首相)
【政治制度】連邦立憲君主制、議院内閣制
カナダはイギリス連邦加盟国のため、「イギリス国王」は「カナダ国王」を兼任していて、現在の国家元首はエリザベス女王2世になります。
ただ1947年以降、君主の役割と責任は、全てが国王から総督(そうとく)に移管されました。
現在のカナダ総督( Governor General of Canada)は、ジュリー・ペイエット氏で元宇宙飛行士の女性総督です。
現在は、カナダ総督が実質女王の代理を務め、国家元首の職務を行っています。
アメリカの例
【国家元首】アメリカ合衆国大統領(現:ドナルド・トランプ第45代アメリカ合衆国大統領)
【政治制度】連邦共和制
【連邦制】
各州ごとに主権の一部があり、各州の地方政府がこれを統治。そして連邦政府(中央政府)は外交政策などを行う制度
【共和制】
主権は国民であり、君主がいなくて国家元首がいる制度
国家主席は中国だけじゃない!
さてさて次は「国家主席」について。
(日中韓首脳会談についてのニュースより)
安倍晋三首相は2018年5月9日、東京・元赤坂の迎賓館で、中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領と会談した。
2018年5月9日 毎日新聞
2018年8月25日、日本の安倍晋三首相は、中国の習近平国家主席に親書を用意していると報じた。
日中平和友好条約締結40周年を踏まえ、日中両首脳の往来実現を強く期待していることを習主席に伝えたい方針
2018年8月30日 日本経済新聞
中国は「首相」も「国家主席」も両方いるようですね。
- 国家主席は首相より偉い人?
- 国家主席という呼び方は中国だけ?
など気になります。
国家主席の定義
「国家主席」とは、アジア諸国における社会主義国の国家元首に相当する役職名のこと。
英語で訳すと「President=大統領と同じ意」と訳されます。
- 中華人民共和国主席(中華人民共和国)
- 朝鮮民主主義人民共和国主席(朝鮮民主主義人民共和国)
- ベトナム社会主義共和国主席(ベトナム)
- ラオス人民民主共和国主席(ラオス)
などがあります。
「社会主義」と「資本主義」の違い
社会主義国という言葉が出てきましたが、そもそも社会主義国ってなんぞやという話から。
よく比較される「資本主義」と「社会主義」の二つは、「国の経済をどんな仕組みで動かすか」という根本の考え方に違いがあります。
大きな違いは、「個人が資本(土地・資金・設備など)を持つことができるかできないか」です。
【資本主義のメリット】
個人が自由に資本を持つことができます。土地、資金、施設・設備などを持っている資本家は、労働者を雇い、自由に競争しながらお金をかせぐことができます。
【資本主義のデメリット】
資本家は安い賃金で労働者を働かせることができるため、結果的に、資本家と労働者で、貧富の差が拡大してしまいます。
つづいて社会主義。
社会主義の発端は、行き過ぎた資本主義社会から生まれました。
【社会主義のメリット】
資本主義が貧富の差を拡大させ、不平等な社会にしてしまうことの欠点を解消するために考え出されたのが、社会主義。
資本は国のもの、または公共のものという考え方です。あらゆる生産の計画は政府が立て、人々は政府が立てた計画にしたがって働きます。
国民全員が政府に雇われた労働者というイメージなので、大きな貧富の差や社会的な不平等は生まれにくくなります。
【社会主義のデメリット】
個人が資本を持つことは認められないため、自由な競争が生まれないため、結果的に経済の発展が遅れがちになります。
「社会主義」と「共産主義」の違い
「中国は共産主義国だ」とよく言われますが、社会主義とどう違うのでしょうか。
実は、社会主義と共産主義は基本的には同じ考えで、
大分類として社会主義、中分類として共産主義があります。
社会主義は、資本主義による社会格差を、社会的手段によって平等な社会を目指す考え方を指します。
共産主義は、社会主義と考え方は同じですが、平等な社会が実現し国が発展したうえで、さらに完全な万人に平等な社会を目指す考え方です。
共産主義は「科学的な社会主義」と揶揄されるように、共産主義とは確かに社会主義の一部ですが、とてつもない理想論を指しているだけのことです。
で、国家主席の存在ってどれくらい偉いの?
国家主席はアジアにある社会主義国の中で「国家元首」にあたる人の職名というのは先ほどお話ししました。
国家主席は、アメリカでいうところの大統領、日本でいうと天皇のこと。
その国においてゆるぎない存在・国のトップが「国家主席」です。
中国の国家主席は特に最強
中華人民共和国主席が、中華人民共和国の国家元首のことです。
中国の国家主席は、中国の議会「全国人民代表大会」によって選出されます。
中国の「国家主席」の主な権限は、
- 法律の公布
- 国務院総理(首相)の指名および要職の任免
- 戦争の宣告
- 外交権
など多岐にわたります。
中国の「首相」=「国務院総理」は、中国の内閣にあたる組織「国務院」のトップとして、行政全般の指揮監督を行います。
特に中国は、共産党の一党独裁制を採用し、共産党の影響力が非常に強いため、
中国の「国家主席」というと
- 中国共産党では「党」のトップ
- 国家主席では「国」のトップ
- 中国人民解放軍の「軍」のトップ
つまりは、最強の権力を持った人物・巨大な権力を持ってるめっちゃくちゃド偉い人です!
中国の国家主席にとって、「首相」はあくまで行政機関のトップの人で、アゴで使えるレベルww(たぶん)。
なので当然、中国では首相よりも国家主席のほうが大きな力を持っているのです。
日本の内閣総理大臣と天皇陛下について
最後に、私たちの住む日本ではどうでしょうか。
ご存知の通り日本に「大統領」はいませんよね。
日本の場合、対外的に、国家元首は「天皇」という君主がいるので「大統領」存在せず、「首相」が行政の最高責任者となります。
「天皇」…国のトップ
「首相」…行政のトップ
日本の内閣総理大臣とは
日本での正しい呼び方は「内閣総理大臣」であり、各国の呼称に合わせて○○首相と、ニュースでは呼んでいるようです。
日本は「議員内閣制」をとっており、国会議員の中から国会の議決で指名され、これに基いて天皇によって任命される仕組みです。
略称は総理大臣や総理。一般的には首相、まれに宰相(さいしょう)とも言われ、現任は「安倍晋三」。
ちなみに、「内閣総理大臣」という官職名は日本独自のもので、外国には見られません。
日本の天皇陛下は世界でただ一人のエンペラー
日本の国家元首は「天皇陛下」。
内閣総理大臣の任命や最高裁判所の裁判官の任命などを行う天皇陛下ですが、
形式的に行うだけで、実際の国家運営の権能は有されていません。
天皇陛下は、外交や内政に関する発言は行わないことになっていて、
日本国憲法下での『天皇陛下』は、政治的に権威があるわけではなく、あくまで“日本の象徴”という存在です。
最初にお伝えした、世界情勢に照らし合わせた権限や存在感のイメージとしては
天皇(emperor)≒ ローマ法王(Pope)>各国の王様(king)>各国の大統領(president)>各国の首相(premier)
という順番になっているので、
「天皇陛下」が世界各国から敬いの対象になっているのは当然ですね。
日本の天皇家は世界最古の家系
日本の天皇家は、世界一長い歴史と伝統がある最古の家系。
紀元前660年に即位した神武天皇(じんむてんのう)が初代とされ、令和時代の徳仁(なるひと)さまは、第126代目の天皇。
つまり、約2700年も続いている家系ということになります。
(ちなみにイギリス王室でも、まだ1000年ほどの歴史です)
現在、英語でEmperor(エンペラー)というと、日本の天皇を意味するほど、唯一無二の存在となった日本の天皇家。
目まぐるしく変わっていく世界情勢の中で、絶え間なく続いてきた世界最古の血筋・家系です。
ただ、繰り返しになりますが、今の日本の天皇は、あくまで“日本の象徴“という存在。
政治的な権力・権威はないため、各国の君主や大統領、首相などと比べるものでは無い、比べようがないということです。
日本の天皇陛下って、尊い存在なんですね!
首相・大統領・国家主席・天皇や総理大臣の権限の違いまとめ
【国家元首】
王族・皇族などがいる国では王様や皇帝、共和制国家では多数決で大統領、共産国などでは一番偉い地位の国家主席など、国家をひとつの「まとまり」としたときの頭・代表となる人物のこと
【首相】
日本においては「総理」「内閣総理大臣」とも言う。議会、大統領、元首などから議員に指名されるもので、行政権の代表者になる人物のこと
【大統領】
共和制国家の「国家元首」という位置づけで、実質その国のトップの人になる人
【国家主席】
おもに、中華人民共和国の国家元首の総称(共産党、軍、国家の代表)で英語での表記は「President=(大統領)」、首相は別に存在する
【総理大臣】
日本での正しい呼び方は「内閣総理大臣」のことで、各国の呼称に合わせて○○首相と呼んでいる
【日本の天皇陛下】
「世界最古の家系」として、格式高く各国から敬われている存在。政治的な権威・権力は有さずあくまで日本の象徴という存在。
自分の国以外に、他国の国の体制などを見てみると、意外なことが知れて面白いとおもいました!