カナダのお役立ち海外生活情報や英語ライフあれこれ

カナダとアメリカの国境線の基準や決め方!直線(まっすぐ)の理由とは?

2020/08/18
 
カナダとアメリカの国境_R
この記事を書いている人 - WRITER -
カナダ・バンクーバー在住3年目の海外生活まだまだ初心者。 40代を行ったり来たりのワーキング主婦。究極の方向音痴と言葉の壁を克服しつつ、多くの人に役立つ情報は何だろうと日々奮闘中。
詳しいプロフィールはこちら

 

海に囲まれている日本にいると、直線の国境線が陸地や川にあることはピンと来ないかもしれません。

カナダとアメリカの国境線の長さは世界最長の全長8,891キロメートル。

陸続きの2カ国の国境線は、川や山脈の上だけでなく、

なんと街中や同じ施設内を通っている所もあり「直線」「曲線」さまざまあります。

カナダとアメリカの国境線がどのようにして決められたのか、

そして、意外に知られていない、2カ国の国境線をめぐる領土問題なども紹介します。

 

国境-National border-の基準とは

 

国境(National border)とは、国と国との境・隣接する国家の間で領域の限界を示す線のこと。

 

国や地域によって境目となる基準はさまざまありますが、国境の決まり方・分け方は大きく二通りあります。

 

自然的な国境=曲線

 

ウネウネと不規則な境界線は、主に大きな山脈や川・湖などの自然の地形を元にした国境。

 

川や湖の形に沿っているため、曲がりくねった国境線になります。

 

人為的な国境=まっすぐ直線

 

もう1つの国境の決め方は、

  • 違う民族同士の境目の線
  • 直線的な緯線や経線

を利用して人為的に決める、まっすぐな国境線です。

 

これら様々なパターンの「国境」が世界中に見られ、通常は隣接する国家間の条約で国境線は定められます。

 

カナダとアメリカの国境線は世界最長8,891キロメートル

 

カナダとアメリカの国境は、同じ2ヶ国間の国境としては世界最長の国境、

 

国境の長さは、全長8,891キロメートル(5,525マイル)!

 

カナダとアメリカの国境線の基準

 

カナダとアメリカの国境線は、場所によって、基準もさまざま。

 

東側(地図右側)の国境線は、

  • セントローレンス川
  • 五大湖

など、自然の地形で仕切られているところが多くなっています。

 

逆に、中央から西部(地図左側)にかけての国境線は、

  • 人為的な北緯49度線(北海道・樺太の辺り)の直線

で仕切られているところが多くなります。

 

また、カナダ国内の大きな州・準州相互間の境界も、ほとんど人為的な直線になっています。

 

セントローレンス川Saint Lawrence Riverとは

 

北アメリカ大陸の東部を流れる大西洋岸側最大の川、セントローレンス川。

セントローレンス川

画像引用:https://wakeandwander.com

 

セントローレンス川は、アメリカ合衆国ミネソタ州のセントルイス川が源流で、

スペリオル湖から五大湖を経て流入し、源流を含めた全長は 4023km、

東海岸のアメリカとカナダの国境を形成している川です。

観光スポット「ナイアガラの滝」で有名なナイアガラ川(Niagara River)は、

写真のように、五大湖のエリー湖からオンタリオ湖へ流れる河川。

五大湖・セントローレンス川水系の一部をなしています。

 

セントローレンス川は、カナダの植民地時代の始まりとされる、1534年にフランス人のジャック・カルティエによって発見

 

当時の探検、毛皮交易、布教の重要なルートとなった場所でもあり、沿岸の主要都市はカナダのケベック州モントリオールが中心になっています。

 

 

カナダ・アメリカおもしろ国境線の画像

 

国境線と言えば、一般的には

山岳地や森林地帯、大草原や農地、湖や川、太平洋や大西洋、北極海の水上…

など、自然地帯の上を思い浮かべますが、カナダとアメリカの国境線の場所はさらにユニーク!

  • 線路を挟んで左右わける
  • 建物の中を通る
  • 森林や土地の上に物理的に切り込みを入れる

など、日本では想像できないような場所にもあるんです!

 

▼北緯49度付近のウォータートン湖。周辺だけ木を切って無理やり国境線出現

597px-49_parallel_waterton-min

49th parallel north at Waterton Lake eastern shore line.july 2007 – Wikipedia

 

 

 

▼横断歩道のような国境線

 

 

▼カナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカワシントン州の境目の線路

カナダ アメリカ 国境

the railroad crosses the US-Canada border at Peace Arch Park. 2007.Vmenkov

 

 

 

▼カナダとアメリカの国境線の上にある図書館として有名な「Haskell Free Library and Opera House」

建物中の床には普通に黒のマーカーで国境線が!(笑)

ちなみにこの図書館、住所と電話番号もカナダとアメリカ別々にあります。

 

 

カナダとアメリカの国境線が決まるまでの歴史

 

「国同士の領土争い」ともいえる国境線の決定。

 

現在のカナダとアメリカの国境線は、半世紀以上の時間と労力を費やして決定されました。

 

1783年・パリ条約

 

▼バンクーバーの起点ともいわれるブレイン国境にあるPeace Arch(ピースアーチ)

アメリカ カナダ 国境

カナダとアメリカの国境の平和のシンボルPeace Archは、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の Surreyと、アメリカワシントン州のBlaineの境界にあります。

 

最初のカナダとアメリカ合衆国の国境は、アメリカ独立戦争※を終わらせた1783年のパリ条約で定められました。

※アメリカ独立戦争イギリス本国とアメリカ東部沿岸のイギリス領の13植民地との戦争

 

1794年・国境委員会を創設

 

ジェイ条約※が国境地域の測量と地図化を本格的に開始。

イギリス領北アメリカとアメリカ合衆国は、共に西方への領土拡大を開始。

※ジェイ条約1794年11月にアメリカ合衆国とイギリスの間で調印された国際条約

 

1818年・カナダ・アメリカの二国間協議でさらに調整

 

1818年の2国間協議により、カナダのオンタリオ州とアメリカのミネソタ州の州境にあるウッズ湖の北西からロッキー山脈まで、北緯49度線に沿って国境が西に延伸されます。

 

1846年・オレゴン条約で最終的に解決

 

1844年のアメリカ合衆国大統領ジェームズ・ポーク政権で、アメリカがロッキー山脈より西・北緯54度40分(ロシアのアラスカ領土南境界に相当)を国境とするよう要求します。

 

話し合いの結果、1846年のオレゴン条約で解決され、ロッキー山脈を西に過ぎても北緯49度線を国境にすると最終決定。

 

こうして世界最長の直線国境が誕生しました。

 

カナダとアメリカにもある!現在進行形の領土問題の代表例4つ

 

日本ではあまりニュースとして取り上げられませんが、

カナダとアメリカにも、いまだ解決しない領土問題・国境論争は多数存在します。

 

領土問題1)ボーフォート海域問題

 

ボーフォート海( Beaufort Sea)は北極海の一部で、カナダのノースウェスト準州とユーコン準州と、アメリカのアラスカ州に面した海。

 

石油探鉱が発見されているにも関わらず、領海範囲がカナダとアメリカの主張が異なるため、石油採掘すら中断している状況。

 

領土問題2)ディクソン・エントランス海峡問題

 

ディクソン・エントランス海峡(Dixon Entrance)は、カナダのブリティッシュコロンビア州と、アメリカのアラスカ州の境界となる海峡。

 

1903年のアラスカの国境を定めた条約で、二国間の解釈が異なり、いまだに海峡の国境線を争っています。

 

アメリカ側は中間線を・カナダは条約の地図に引かれた線を国境線としてそれぞれ主張中。

 

領土問題3)ファン・デフカ海峡

 

ファン・デフカ海峡Strait of Juan de Fuca‘は、カナダ西海岸にあるブリティッシュコロンビア州のバンクーバー島南部と、アメリカのワシントン州オリンピック半島との間の海峡のプレート名。

 

「ファン・デフカ」とは、16世紀ごろにスペイン王フェリペ2世の下で、カナダ西岸を探検した人物名に由来するといわれれていますが、

諸説・異説さまざまあり、未開の海峡となっています。

 

領土問題4)マキアスシール島&ノースロック

 

マキアスシール島(Machias Seal Island)  は、アメリカのメイン州にあるカトラーの南東沖合およそ16キロ、カナダのニューブランズウィック州グランドマナン島サウスウェストヘッド (Southwest Head) の南西およそ19キロメートルのメイン湾に位置する島。

 

カナダ アメリカ 国境

Machias Seal Island, NB in 2005.photo by Albnd

 

同島の北北東3.8キロメートル地点にある露岩ノースロック (North Rock) とともに、双方が領有権を主張していて、

現在、この島で生まれた人は、両国の市民権を得られるようにしています。

 

マチアス・シール島にある灯台は、カナダの警備隊が維持管理しています。

 

「直線の国境」から垣間見える領土問題

 

世界を見渡してみると、アフリカの国々の国境に直線が多い理由は、緯線や経線をそのまま国境にしているからです。

 

19世紀の中ごろ、イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパなどの列強国は、アフリカで自国の領域を広げようとして激しく対立していました。

 

19世紀の末、列強国同士で話し合った結果、緯線や経線を元にして、それぞれの領地や取り分の範囲を決定。

 

つまり、欧州諸国は自国の領土確保ばかりを考え、

先住民たちの民族性や文化を考慮せず、スパッと簡単に地域を分け合った結果、

直線的な国境線が数多く生まれてしまったのです

 

結果、アフリカの国々が

  • 1つの民族なのに他国に分裂されてしまった
  • いくつもの民族がまとめて1つの国になってしまった

などさまざまな問題が勃発、現在でもなお、民族紛争が絶えない事態になっています。

 

またアフリカだけではなく中東もしかり。

 

中東の国々の国境線は、オスマン帝国の分割を決めた1915年のサイクス・ピコ協定※という条約が基本となっています。

※サイクス・ピコ協定第一次世界大戦中の1916年5月16日にイギリス、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマン帝国領の分割を約した秘密協定のこと

 

アメリカ国内、アフリカ大陸、アラビア半島、オーストラリア国内など世界中で数多く見受けられる、直線でまっすぐ人工的な境界線は、

いわば20世紀の「自己中心的発想」の領土の奪い合いの結果、とも言えるのではないでしょうか。

 

カナダとアメリカの国境線の基準や決め方!直線の理由まとめ

 

カナダとアメリカの国境の歴史や現状などについて紹介しました。

領土問題はどこの国でも存在する根深い問題ですね。

「直線の国境」は、植民地目的の分割は論外だとしても、、領土問題を発生させないためには、

カナダとアメリカの例のように、経線や緯線での直線的な国境に敢えてするのは、意外に良い解決方法なのかもしれませんね。

でもやっぱり、いつか国境のない世界が実現するといいですよね!

この記事を書いている人 - WRITER -
カナダ・バンクーバー在住3年目の海外生活まだまだ初心者。 40代を行ったり来たりのワーキング主婦。究極の方向音痴と言葉の壁を克服しつつ、多くの人に役立つ情報は何だろうと日々奮闘中。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© バンクーバーの空に描く夢 , 2018 All Rights Reserved.